Tsuyu Bridwell インスタレーション・アート

フランス在住のアーティスト・Tsuyu Bridwell氏からのご依頼で、大型インスタレーション作品の一部を制作しました。海外からのオーダー、提灯の技術を応用したアート作品という初めてづくしのオーダーでしたが、ご満足いただける作品に仕上がりました。南フランスにある老舗ショッピングモールにて展示中です。

※2021年納品

提灯の技術で、アートの世界観を表現

高さ23mのアトリウムに浮かぶ、高さ15m、幅7mにもおよぶ巨大なアート作品「La danse des cocons (繭たちの踊り)」。南フランスのPolygone Montpellier(ショッピングモール)に展示されているインスタレーションは、提灯の技術を活用して「繭」を表現しています。エネルギッシュでかつ癒しを与える作品に使われた、280個の繭提灯を作りました。

空が見えるガラス張りのモダンな大空間に、伝統を生かしたアート作品をおきたいというTsuyu Bridwell氏が選んだのは、日本の提灯でした。提灯はとても軽く、和紙の透明感や自然素材の洗練性があります。また、コンクリートやガラス、鉄筋などの素材のなかでも落ち着いた雰囲気を放つというのが選ばれた理由でした。

しかし繊細な表現が要求されるアート作品のため、「従来の提灯はこうでなくてはいけない」「普段使っていない素材で作るのは難しい」と難色を示す職人が多かったそうです。そうしたなか弊社の提灯職人・小島まりやを見つけ、直接のご連絡をいただいたのが始まりでした。

フランスからの突然の依頼、しかもアート作品ということで驚きましたが、何事も挑戦するというモットーのもとお引き受けしました。フランスと日本、離れてはいましたが感覚を共有でき、求められた表現を形にすることができました。作家と職人、どちらも女性ということもあり、感性に通ずるものがあったこともプラスとなりました。

海外在住の方なので、提灯のことはよく分からなくて当たり前。だからこそ、丁寧な説明を心がけました。伝統を受け継ぐうえで「変えないこと」は重要ですが、新たな可能性を見出すことも同じくらい大切です。無理だと最初から諦めるのではなく、可能な限りオーダーにお応えすることで提灯の可能性が広がります。

初の海外オーダーで、かつビッグプロジェクトへの挑戦でしたが、無事に280個の提灯を納めることができました。越前和紙を使ったアート提灯は、今後数年間、展示される予定です。

Concept

制作のポイント

骨(ひご)の間隔が広い形状
採用された木型は骨(ひご)を巻く間隔が通常の提灯より大幅に広く、和紙を貼るのが難しい形状でした。何度も試し貼りし、試作品をフランスへ送り実物を確認してもらいながら微調整を行いました。
表現に対する感覚の共有
「他の提灯工房も検討しましたが、まりやさんが私の表現したいことを最も理解してくれました。男性が多い提灯業界ですが、女性同士のせいかコミュニケーションがスムーズだったことも大きかったです」とTsuyu氏。提灯技術の提案だけでなく、アート表現に対する感覚を共有できたことが制作に役立ちました。
リモートによる打ち合わせ
Tsuyu氏の来日予定がコロナ禍により中止となり、対面での打ち合わせを断念しました。そのためビデオ通話やメッセージのやり取りを密に行い、リモートでの打ち合わせを重ねて制作を進めました。

Exhibition

La danse des cocons (繭たちの踊り)

作者:Tsuyu Bridwell
展示場所:ポリゴ-ヌ(Polygone Montpellier) -モンペリエ市(Montpellier)-フランス

※南仏の老舗ショッピングセンター、ポリゴ-ヌ(Polygone Montpellier)がリニューアルし、高さ23mのアトリウムに同インスタレーションが展示されています。

Artist

Tsuyu Bridwell

韓国人の父と日本人の母を持つ。1967年東京生まれ。9歳で一家で渡仏。ロゼラハイタワー国際ダンスセンターでバレエと音楽、パリ国立演劇コンセルヴァトワールで演劇を学び、女優として数年間働く。舞台芸術におけるキャリアは彼女のビジュアルアート作品を豊かにし、作品と観客者との間のオーガニックな表現の流れを促進する。
Tsuyu Bridwellのアートは、信念と先祖の儀式からインスピレーションを得て、生命の力と繊細を表現している。時には、人間が伴う儀式、迷信の表明などの必要性をユーモラスに創作している。
日本、韓国、フランスの伝統的な工芸品を提唱しながら、さまざまなメディアを使用し、集合的記憶の存在と自然の表現をを直面するインスタレーションとオブジェクトを制作する。

www.tsuyubridwell.com

Photo by Delphine Chanet